こんにちは、インテリアコーディネーターの ほんだなつこ です。
先日、東京ビッグサイトで開催されたJAPANTEX2024 Windows paradiseに参加させていただきました。
今回の展示では、「シェアハウスに住むアーティスティックな仕事のプロをめざす住民たち」というテーマで、窓装飾を中心に空間をコーディネートしました。
私の決めたテーマは「舞台美術の仕事をしている40代男性」。
彼が暮らす部屋をイメージしながら、インテリアを一つひとつ選び、作り上げていきました。
さて、どんな空間になったのでしょうか?
作成までの過程も含め少し覗いてみてください。
物語が始まる部屋
北九州出身の彼は舞台美術のプロフェッショナルをめざしています。
彼の部屋は、アートや伝統、ビンテージへの深い愛着が感じられる空間にしたい。
そして何より、自分の手で作り上げる楽しさが詰まった場所。
まず彼のライフスタイルを想像しました。
舞台のアイデアを練る時間、作業道具に囲まれる日常、そして地元・北九州の伝統工芸への愛着。
最初に決めたテーマは「想像力を掻き立てる空間」 楽しさたりないなぁ
「想像力と好奇心を刺激するビンテージ感あふれる空間」。
そんな言葉が浮かんだ瞬間、空間作りが一気に進み始めました。
素材と色で語る
こだわったのは素材と色。
舞台で使われた布の端切れをつなぎ合わせたパッチワークカーテンは、リボーンファブリックで作成しました。
布そのものがその場面を思い出し、物語を語りかけるようなデザインです。
そして、カーテンバランスには布を巻き付けただけのラフな仕上げを選びました。
タッセルの代わりは、バランスとタペストリー使った残りの合皮のひもを結んだだけ。
レースはシェード風にするために小倉織の端切れで作ったひもとベルト金具をつかっています。
「未完成感」が、生活感やリアリティを引き立て、DIYの楽しむ姿も想像できるのではないかと思います。
家具は彼のコレクションであるアンティーク、使い古された温かみとクラシックな美しさを両立。
アンティークチェアーのレザーと鋲はカーテンバランスとリンクさせました。
床に敷いたオールドキリムは自宅から持ち込み。
彼の仕事道具であるトランクや脚立、そのままインテリアとして活用。
三脚ライトやアンティークの木箱、ペイント用のバケツとペンキで汚した壁など、
小物の一つひとつにもストーリーを持たせています。
これが、彼の日常を自然に表現するキーアイテムになっています。
壁には無造作に貼られた写真や切り抜き。
アイデアを膨らませるための大切な”キャンバス”であり、大切なコレクション。
50年代のレコードジャケットコレクション(私物と借り物)は
見に来てくださったちょっと年上のおじさま数人から懐かしいねとお声掛けいただきました。
クッションとファブリックパネルには、北九州の伝統工芸である小倉織を取り入れ、
地元との繋がりをさりげなく表現しました。
クッションのフサは縦糸を手で抜いて、横糸だけを残しています。
色彩で深みを
色遣いはテトラード配色(四角形のカラーパレット)を採用しました。
展示パネルの両端上部の4色が今回のカラー。
低明度・中彩度(dp・dk)のトーンでまとめることで、派手になりがちな多色使いを落ち着いた雰囲気に。
深みのある色彩が、この空間に奥行きを与えてくれます。
さらに、「動物」をサブテーマとしました。
クッションにアニマルプリントを取り入れて、たてがみやしっぽに見立てたフリンジを使ったり、
愛犬たちの写真を壁に貼ったり、動物をちりばめることで温かみをプラスしました。
このブログでらむねのファンになってくださった方、懐かしい写真を連れて行きました。
今そばにいる保護犬出身もも(ボストンテリア11歳)も一緒です。ここは私個人の物語も加えています。
仕事スペースと休むスペースを分ける間仕切りカーテン、圧迫感がないレース3色の組み合わせ。
梁に巻き付けているだけなのでしっかり間仕切りたいときはおろせるようにしています。
「創造力と好奇心のおもちゃ箱」
最終的に、この空間には「創造力と好奇心のおもちゃ箱」というタイトルをつけました。
まるで舞台の幕が開く直前のような高揚感。
訪れた方々から「住んでいる人の姿が浮かぶ」と感想をいただけたのは、何より嬉しい瞬間でした。
プロの方、製作にかかわってくださった方には細かいこだわりポイントを見つけていただいたり、
コミュニケーションもたくさんとれた楽しい時間でした。
実は、このコンセプトの着想は、あるミュージックビデオのワンシーンから得たものです。
重厚でドラマティックな空間、アンティークの小物、蝋燭の暖かい光、揺れる布。
そのシーンが与えてくれた感性から広げていった、「こんな空間を創っている人」
を想像しながら作り上げていったものが今回の展示です。
他にもベッドヘッドや縫製工場の方と対面でしっかり話し合って作り上げたタペストリーやカーテンバランスなど想いの詰まった作品です。
川島織物セルコンのファブエース、商品開発の方がこのベッドヘッドを見に来てくださいました。
カーテン生地と椅子生地(合皮)をリングランナーでつなぎあわせるという無茶ぶり。
縫製していただいた東和商会さんとのお打ち合わせはとても有意義な時間でした。
展示も見ていただきたくさん感想もいただきました。感謝しかない。。。
今回の展示を通じて、インテリアが持つ物語性や想像力、布の持つ多様性を改めて感じました。
この記事を読んでくださった皆さんも、ぜひ自分だけの「物語」を自分の空間に取り入れてみてください。
2024年も残り少なくなりました。
今年も多くの人や素晴らしいお仕事との出会いに恵まれ、とても充実した時間を過ごすことができました。
こちらを読んでくださっている皆様にも感謝の気持ちでいっぱいです。
来年も引き続き、インテリアを通じてたくさんの物語をお届けしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
インテリアコーディネートほんだな
【おまけ】前のりした時の作業途中の現場の状況をパシャリ。